今日、福井市では
「飲酒後に運転代行業車がつかまらない」
とよく耳にする。
そして「福井は運転代行業者の数が足りていないのではないか」と続くのである。
需要過多で供給が追いついていないのであれば、運転代行業者は潤うはずである。
しかし、当の運転代行業者は業界の苦しい現状に喘いでいる。
では、なぜこのような矛盾が起こるのか。
大きな原因は、福井市の多くの運転代行利用者の利用が曜日・時間の面で局所的だからである。
具体的には、金土の22時〜翌1時の3時間ほどに利用が集中し、その間は業界全体のリソースが極端に不足するのである。
そうなれば多くの利用者は、電話が繋がらない、繋がったところで待ち時間が極端に長いなど、帰宅困難な状況にさらされることとなる。
この状況を数度体験すれば「福井の運転代行業者は、なぜこんなのも需要があるのに対応しないのだろう」と不思議に思うだろう。
では、福井市で営業する運転代行業者の営業時間全体で考えるとどうだろうか。
需要と時間経過の関係は以下の図の通りとなる。
ご覧の通り、24時前後に集中しているのがわかる。
では、供給数はどうだろうか。運転代行業界全体の供給数は、時間とともに多少変化するものの、需要の変動と比べるとほぼ一定として考えても差し支えない程度のものである。
それを踏まえデフォルメした図が以下の通りとなる。
24時前後は、一時的に福井市の運転代行業界全体の供給数を需要が大きく上回り、リソース不足になる。
これを解消するために赤いライン(供給数)を上げるとどうなるだろうか。
答えは簡単で、空車の面積が増える。
つまり、稼働していないのに人件費だけが嵩む時間が増え、薄利の業界では簡単に赤字になってしまう。
供給数を上げられない理由はもう一つある。
それは週末だけ出勤可能な人材を揃えるのが求人競争力の低い(労働環境に対する対価が低水準)業界として非常に困難だからである。
平日は以下の図のように需要が極端に減るため供給数を減らしたいが、それは人材流出に直結する。
このバランスの中で供給数を調整して利益を出さねばならない。福井市の運転代行事業者はこのジレンマに悩まされているのである。
次に、コロナ禍前と比較たい。
以前と比べ、運転代行の経営は難しくなったと感じている事業者は多いのではないだろうか。
それはなぜか。
私は、先の図の需要曲線がコロナ禍を経て顕著になったからではないかと推察する。
先に説明するが、この需要曲線がなだらかになると「空車」の面積が減り、経営が安定傾向に振れる。逆に尖れば「空車」の面積が増え、経営が難しくなる。
ではなぜコロナ禍を経てこの曲線が尖ったのか。
要因として考えられることは、福井市内の飲食店の数に対し客数が減少したことである。
その仕組みはこうだ。
飲食店利用者は減ったが飲食店の数(席数)は横ばいである。客数の減った飲食店は、リソースに余裕があるため注文商品を提供し終える時間が早くなる。
すると客は自分たちが満足したタイミングで店を出ることができる。そして2件目へ・・・仕事を終え飲食店へ、滞りなく提供を受けることで、満足して帰る時間が重なる。私はこのように考えている。
この状況を踏まえると、多くの人が「運転代行業者は足りていない」と感じる状況はまだまだ続きそうである。
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